エゾリスの会 非公式ブログ!

北海道帯広の環境系まちづくり団体「エゾリスの会」会員による非公式ブログ https://noken.hatenablog.com へ引っ越し

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これでいいの?NHK「ダーウィンが来た!」の演出

http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program104.html

「まるでイソップ?札幌リス物語」において、リスの生態に誤解を招くのではないかと言う演出がありました。

演出することそのものはある程度はいいと思いますが、それによって生じたと思われる誤解はこの場で解いておきたいと思います。

その後の検証も記事にしました。参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/noken/20080827

・「アリとキリギリス」に例えるため、シマリスの巣への貯食には細かく触れているのに、エゾリスの分散貯食には番組後半まで全く触れず、終わり近くになってから軽く触れる程度でした。タイトル、オープニング、いくつかのシーンを積み重ねて、イメージを植え付けています。よくある台本ありきの作品のように感じられます。

・また、エゾリスが貯食していた餌を探すようすを「必死で、必死で」と連呼し非常に大変であるかのように強調していました。積雪が深くチョウセンゴヨウがない札幌の環境は帯広と違うため、移動距離は多いとは思いますが、実際に見つけるときは意外なほど簡単に雪の下の餌の在処を突き止めます。

これらのことでエゾリスシマリスのイメージの違いをかなり強く植え付けていると思います。
問題はそのイメージと実際の間の齟齬が大きい 〜ここで訂正しなければいけないほど〜 のではないかということです。

より固いえさや松ヤニだらけの松ぼっくりを剥いている分、実際にはエゾリスの方が貯食に要する作業量は多いような気がしますが、テレビではそんな感じではなかったですね。つまり、いかにもエゾリスがらくーに「キリギリス」しているような印象を与えようとした結果でしょうか。

・餌付け撮影を疑うようなシーンがありました(疑いです)。シマリスと同時に写っていたシーンです。
実際に出会うということは、双方の密度が高ければあり得ますので、シーンそのものが過剰とは思いません。手法の問題です。いい、悪いということの前に、論議の対象にはなるでしょう。

いま確認できましたが、少なくともエゾリスは、元々えさやり場に来ていた個体のようです。
そういう場所でないと撮影は大変というのはわかります。しかし、そこで撮影したものを放送することがそのまま無批判に餌付けOKと言うことではない、と言っておきたいと思います。

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一部のリスや小鳥に餌をやって楽しむ、愛でるということは全否定はしません。しかし、そこに発生する責任、リスへのデメリットをよく吟味して行動を決めなければいけない。そんな自然環境になって来ていると思いませんか?いうまでもなく、盲目的、依存的に餌をやるのは肯定できません。ペットを飼えばいい話です。もしそれができないのなら野生生物への責任だって負えていないという話になります。完璧に責任を取ろうとは言いません。言い訳にならないベクトル、方向性を持ってほしいと思います。
#オススメしません野生動物への餌付け  http://d.hatena.ne.jp/noken/20070802

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・帯広のエゾリスの橋が紹介されていたが、実際にあの橋は事故のないところに橋が架かっていて、事故のあるところにはかかっていません。(その後事故が起きそうなところにもう一つかかりましたが、うまく行っているかどうかはわかりません。一度、その橋の真下でリスの交通事故が起きています)

それから、橋を固定する部分で、他の生木に巻き付けている部分があるのですが、毎年メンテしないときに食い込んでしまいます。その辺の手入れ、してるのかな。

視聴者は橋のおかげで事故がなくなったかのような錯覚を覚えるはずですが、実際には自分の身の回りだけでも年間10件以上のエゾリスの事故死が見つかっています。市内全体では当然もっとあるでしょう。

一方シマリスは林道以外の事故死はほとんどありません。

しかし・・・・・、しかしです・・・・・。

「交通事故に遭う」ということは、「道路を渡る能力がある」ということです。
「交通事故に遭っていない」ということは「道路ができただけでもう渡れない」または「交通事故に引っかからないほど少ない」ということです。

交通事故に遭っているエゾリスとほとんど遭っていないシマリス、どちらが危機的な状況でしょうか?


番組でそこまで詰め込んでほしいとは思いませんが、誤解は与えないようにしてほしいと思います。
実際、自分の身の回りでも、誤解されていた方がいたのは事実です。


良かった点も書いておこうと思います。

エゾリスシマリスは違う、別な種類のリスである。という点をはっきりと表現した。
同じ枝に止まった大きさの違い、行動場所の違いなどがとてもわかりやすかったはずです。

シマリスの冬ごもりのようすが見られた。あのヨロヨロ感はすごいですね。

エゾリスが木から落ちるシーン。貴重ですね。でも、アレで冬が大変だという話になるのかな?

エゾリスがリスの橋を渡るシーン。これも価値あると思います。
件の橋はもともと「事故を防ぐ」ためのものではなく、「ああいう構造のものでも渡るか」という実験だったので(つくったとき関わりました)、そういう意味に置いては、渡るようすを動画で紹介したのは価値あると思います。

5札幌のエゾリスの様子が見られた。
積雪が深いところのリスはそれほど紹介されていないかもしれません。比べると十勝のリス密度が上がる理由がなんとなくわかります。

十勝のリスの方が幸せとは言い切れませんが・・・・。シマリスは市街地周辺では非常に少なくなっていますし、密度の増加はエゾリスの事故増加につながっているような気がしますし。札幌のエゾリスは安定的なのでしょうか?どれくらいの増減の波の振幅で自然のレベルと言っていいのだろうか?その辺は考えるところですね・・・。