オススメしません野生動物への餌付け
エゾリスの会では、特に事情がない限り、公園のような公共地や、交通事故の直接的な危険を増やすような場所での野生動物への餌付けはしない、すすめない方針です。
・不特定多数の人が行うもの
・エサ量や質のコントロールができない状態で行うもの(不特定多数だとコントロール困難)
・趣味や娯楽や「必要である」との思いこみで行うもの
・動物の交通事故などを増加させる可能性が高い餌付け
は不可という見解です。
これとは別に、
絶滅危惧種の保全、調査研究、社会的に必要であると認められた行為で、なおかつ科学的な考え方での「方法」のコントロールができるものは可と考えます。
→ そもそもそんな方法は確立されていないのです。このため、最低でも餌付け前後のモニタリングと見直しの仕組みを持った手段が必要であると思います。
また、個人の庭や学校などの餌台などは、それぞれ楽しんでいただいて良いのですが、元々はあったマナーやルールが廃れてきており、これを改めて普及しなければならないと考えます。特に学校などでは設置するかどうかを含め、以下の点をふまえて論議することを推奨します。
まず・・・
餌付けとは何か?
・・・を、考えてみてください。
餌付けは、人間にとっては何か意味のある場合があるでしょう。
しかし、野生動物にとって「同じ意味」があるとは限りませんよ!
むしろちがっていると考える方が自然ではないでしょうか?
以下に餌付けについての考えをまとめてみました。
餌付けとは・・・・
1必要がない
もともと野生動物は自立しており、餌付けをする必要性がありません。
2殖やす必要があるのか?
そもそも、その自然の質・量に応じた数だけ動物(例えばリス)がすんでいるわけで、増えることは競争を激しくするだけではないでしょうか。絶滅危惧種でない限り一種をねらって増殖させる必要はないでしょう。
「殖え」ればいい、というのは家畜や人間の世界のハナシにすぎません。
野生生物のためにできることは、ほとんど、地域の自然の質と量を向上させることだけです。人間がやる餌はまさに「人工」であって自然の質とは評価できません。
3交通事故が増える
道路間際の餌付けにより事故が頻発しているにもかかわらず、餌付けをやめない方がいます。
公園では、餌付けをすればエゾリスがすめる限界数をすぐ超してしまい、交通事故の危険を冒して外に出る数が増加します。
増やしてはひき殺す、ではしゃれにならないと思います。
4環境教育上の問題
「野生動物にはエサをやるものだ」という間違った情報を流布します。
特に子供たちに餌付けをさせるのは良くないと思います。
5植生が変わる
例えば、緑ヶ丘公園では餌付けが多すぎるので、リスがうめたクルミをあまり掘り出さないようです。このため、クルミの木が非常に多くなりつつあり、植生が大きく変化する可能性があります。
6自然環境への評価を不正確にする
餌付けをすれば、自然が貧弱なところでもそれをごまかすことができます。
リスや鳥で自然を評価しようとした場合、餌付けがあるとその妨げになります。
例えば「帯広の森」の中でも、森が貧弱なのに餌付けのためリスの密度が異常に高い地区があります。南のパークゴルフ場がそれです。
リスがいる=自然が豊か とは言えない状況をつくっています。
7自然の再生につながらないのならない方がいい
餌台にリスが来ることで人間が満足し、公園などの自然の質の向上にはつながりにくいのではないでしょうか。
8感染症や薬物中毒の問題
ほ乳類の場合はダニやノミが媒介する寄生虫、感染症(リケッチアなど)。
また逆に、「人間から動物へ」病気をうつす可能性もある。
動物が集まりすぎることで「動物どうし」の感染症を流行させる可能性を高める。
例えばヒマワリの種には農薬は使っていませんか?餌そのものの汚染によって動物の死が生じることもありますよ。
スズメの大量死疑惑で、サルモネラ菌類が発見されたことは記憶に新しいですね。
高病原性鳥インフルエンザも含めて、人間が仲介となって自然界に感染症を広げた例といえます。
9動物がなれすぎる
私の職場で親子のリスが遊んでいました。人間がいても気にせず、ほほえましい光景を見せていました。遊びながら道に駐車してある車のタイヤハウスに潜り込んだときにドライバーが帰ってきて車を発進させました。親リスは早めに逃げましたが、子リスは全く逃げず、そのまま轢かれてしまいました。
エゾリスがこんなになれているのは帯広だけです。ほとんどの地域では存在しているのは確かなのにあっという間にすがたを消してしまう警戒心が高い生きものです。
元々人間がいるところで生まれ育っているので、餌をやらなくてもあまり逃げないのです。
人間は「あまり逃げない」というレベルで満足すべきでしょう。
それ以上接近させることなど、人間の欲を満足させるための行動でしかありません。
10餌付けを見て不愉快になる人もいます。
この画像を見てください、「人の数だけ餌台がある」状態です。
餌付けは誰のため?何のため?ただ自分の所有欲を満たすためだけの「私物」を「公共地」におかれるのはいい気持ちではありません。管理者がこれを放置するなら、どんな私物をおいてもイイと言われても反論できないのでは?
(2016.613加筆)公園は公共の場所です。この餌台のような状況や「手乗りリス」を自分の欲求で作り出すのは、公共地の壁に落書きするようなものでしょう。
某所では、写真を撮る人がにナキウサギにヒマワリをあげているとか・・・。原生花園でキツネの写真を撮るために積み上げたドッグフードの山をみると、ホントにがっかりします。最近は公園内にもドックフードが積み上げられています。
エサといっても所詮生ゴミとおなじでは?自然から見ればたいして変わらないこの二つを分けているものは何なのか?
考えてみましょう。
11責任が発生しますよ!
餌付けをすればそこに「責任」が発生します。自然はわからないことの方が多いので、何も完璧である必要はありませんが、「責任の発生」「どのような責任があるか」について自覚する必要はあると思います。
ペット飼うときも覚悟がいるのですから、野生動物も当然です。
なぜ野生動物へだけ、エサやりっ放しであとは責任はないと思いこまれているのでしょう?
おしまいに
餌付けはリスなどの生きものを身近に親しみやすくする役目は果たしましたが、そろそろこれを卒業し、次の自然を質を上げたり、再生する段階へ向かうべきと考えます。ハクチョウやタンチョウ、東京の公園ですら餌付けのコントロールがうたわれています。リスのような身近な生きものから、つきあい方を考え直してみましょう。
追記
特にマスコミのポジションはとても重要です。餌付けを無批判に善行とする記事の多いこと!これは最悪だと思います。また、餌付けに批判的な記事でも、科学的な裏付けがない場合もあります、これもかえって逆効果、自然への理解を屈折させてしまいます。ほんとに気をつけてほしいと思います。
関連エントリ(このほか、PCの方は上部の検索窓に 餌付け と入力し、検索して下さい)
おすすめしません野生動物への餌付け
http://d.hatena.ne.jp/noken/20100125
マスコミの認識不足について
http://d.hatena.ne.jp/noken/20070801
帯広市環境基本計画に「野生動物に餌付けをしない」指針
http://d.hatena.ne.jp/noken/20150816
マダニ媒介SFTSウイルス北上中
http://d.hatena.ne.jp/noken/20140221
エゾリスにはマダニやノミがついています
http://d.hatena.ne.jp/noken/20130904
餌付けがエゾリスを殺すこともある
http://d.hatena.ne.jp/noken/20111210
野生動物への餌付けをしないで下さい(帯広の森)
http://d.hatena.ne.jp/noken/20131119