エゾリスの会 非公式ブログ!

北海道帯広の環境系まちづくり団体「エゾリスの会」会員による非公式ブログ https://noken.hatenablog.com へ引っ越し

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特定外来生物アライグマ帯広の森に出現

noken2016-07-10


追記します。本州の調査ですが、アライグマのSFTS重症熱性血小板減少症候群ウイルス)ウイルスの抗体保持率が半数を超えており(キツネでは見られなかった)、
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2342-related-articles/related-articles-433/6320-dj433a.html
また、その保持率が急激に高まったことがわかりました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/21/3/21_3_67/_pdf

アライグマはエゾシカよりもずっと市街地に適応しやすい動物で、人家や物置に好んで巣を作ります。

つまり、SFTSをはじめとするダニ媒介感染症が、アライグマの行動を軸にして蔓延する可能性が高いことを示していると思います。この病気はエキノコックスよりもずっと早く重症化します。一般の方が感染する確率も高くなるでしょう。エゾリスへの餌付け環境から容易に想像できます。ダニの運び屋であり、生活環境でもある動物の密度を不自然に高めているのですから。

特定外来生物の防除に、もっと税金を投入するためには、市民の声が必要だと思います。

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2013.905の内容を再掲します。
*このエントリはどんどん新しい情報が入ってきますので、当面の間加除訂正し続けますのでご了承下さい。

帯広の森」のモニタリングサイト1000の自動撮影カメラにアライグマが写っていたことが数日前にわかりました。
撮影されたのは2013年8月23日で、二カ所のカメラに写っています。
市内初ではありませんが、このような市街地に隣接した環境で確認されたのは初めてです。

農畜産・家庭菜園への進入、人獣共通感染症もさることながら「帯広の森」の生態系全体への悪影響は計り知れません。
アライグマは現在日本国内で確認されている外来種のうち、最も生態系に大きな破壊をもたらす種と言っても過言ではないでしょう。

特定外来生物の、販売・頒布目的での飼養、不正な飼養、許可のない輸入や販売、野外へ放つなどの行為に対しては、個人には3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。また、特定外来生物について販売・頒布以外の目的での飼養、未判定外来生物について通知なしの輸入に対しては、個人には1年以下の懲役や100万円以下の罰金、法人には5000万円以下の罰金が科されます。

もし公園内の特定外来生物になんの対策も行わなければ、公園で飼っているようなものですから、その自治体には相応の罪が潜在するのではないでしょうか。しかし、罰金は科せられません。それはなぜでしょうか?
これは実はいろいろな法律にあてはまるのですが、もし自治体から罰金を取るとしたら、それは税金から取られます。一方外来種による被害は農業、生活、自然環境を長期にわたって悪化させるものです。罰は被害として受け取ってしまうので、罰金を取れば2重の罰となってしまうからだと思います。

暗に、対策しなければ(罰金はないけど)困るのは市民の皆さんですよ、という概念になっているのですね。
外来種問題は、誰も得をしない問題です。元あった自然も、外来種も、人間も、問題解決まで損し続けます。
ですから、関係各所がよく勉強し、効果的な手をなるべく早く打つ必要があります。
対策が早ければ早いほど、犠牲になるアライグマと在来の生物は少なくてすみます。同時にこれに関わる人間も労力が少なくてすみます。これはかなり重要なことだと思います。

そういう意味では、森に出現してから危機感に火がついているブログ管理人も、ダメですね・・・・
これで、セイヨウオオマルハナバチ ウチダザリガニ オオハンゴンソウ そして今回のアライグマ 北海道に生息する外来種のうち魚類を除く主要なメンバーがそろってしまいました。
このほかにも、オオアワダチソウ ルピナス ハリエンジュ アメリカミンクなどが生息してしまっています。
(個々に対策するだけではなく、やはり具体的な管理計画の必要性がここにも存在しているのだと思います。)


アライグマの直接被害を最も受けやすいのは ニホンザリガニ と考えています。
このほか、エゾサンショウウオへの捕食圧も半端ではありません。より市街地に近い大山緑地・若葉の森の最も市街地無いに生息する個体群(エゾサンショウウオ・ザリガニとも)にも危機が迫っています。

このほか、鳥類、エゾリス、などなど多くの野生生物の生息状況を一変させる可能性があります。木の枝で編んだ冬の巣などは、アライグマにかかれば、あっといまに分解されてしまいます。つまり、エゾリスにとっても生息の危機です。公園に無秩序・無責任に置かれている餌が、アライグマを利する結果となる場合もあるでしょう。

効果的な罠かけなど、誰もが思いつくことはさておいて、以下に見逃しがちなことを述べたいと思います。

1.キツネの捕獲はすべきでない
これは重要な対策ではないかと思います。
北海道大学教授 阿部永さんによれば、「北大植物園においてエゾリスを保護しようと思いキツネを排除したところ、かえって野良ネコの侵入を許す結果となり、リスがいなくなってしまった」という事例があるとのことです。
現在でも「帯広の森」の中ではキツネの捕獲は行われていないはずですが、市街地ではかなり多くの捕獲が行われているようです。動機はエキノコックスへの恐れです。
アライグマよりエキノコックスが怖いと思うかもしれませんが(エキノコックスはアライグマにも入るかもしれません)
しかし、下記リンクを読んで下さい。

アライグマ回虫症
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g2/k02_42/k02_42.html

エキノコックスは確率もごく小さく(毎日キツネの巣穴に入って遊ぶくらいしないと寄生虫が体内に入らない)、潜伏期が長く初期なら薬で十分治ることがわかっていますし、多くの人は土いじりのあとの手洗いなどがちゃんとしていれば平気だと知っています。
しかし、アライグマは2階にも上れますし、家にも入ってきます。キツネの行動パターンとは全く違います。より図々しいのです。
対策をよく知らないこの寄生虫と、比べたらよく知っているエキノコックスでは、後者の方が断然安全です。

キツネがいることで、多少はアライグマの侵入を遅らせることになるだろうと思います。
ですから、「帯広の森」の周囲でも捕獲はなるべく行うべきではないと考えます。
また、キツネがアライグマ回虫を運ぶ可能性もありますが、キツネを捕る方がアライグマを捕るよりずっとたやすいと思います。

そもそも「帯広の森」は十勝の原生的な自然の方向へ戻す管理方針ですから、特定外来生物の捕獲と
在来種の捕獲は全く逆方向となります。

2.北海道の取り組みと自治体への促し
北海道の基本方針
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/araiguma/kihonhoshin/araigumakihonhousin.htm
北海道の生物多様性保全課はその施策の一環として、アライグマへの対策計画策定を各自治体に促しています。
新しい条例の中には、外来種への対策や餌付け問題などに関する項目があります。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/tayousei/tayousei_top.htm
本来なら、その対策計画に沿って動けばいいのですが、帯広ではまだ策定されていない現状です。

3.知りうる限りの十勝での情報
2008年 清水 http://okiguns.blog.ocn.ne.jp/obihirobukai/2008/10/post_cf84.html
2009年 阿部豪さん*NGOアライグマ研究グループ代表 
http://tokachi.hokkaido-np.co.jp/kotoba_file/20090701.html
山を越えてきたのではなく、十勝管内での放逐が起源と考えている点が興味深いです。何となく札幌方面から来たのかな?と思っていたのですが、その後の情報を考え合わせると十勝内に数カ所の中心を持つ分布のようです。実際30年ほど前には帯広でもアライグマが販売されていたようです。
2010年7月 おびひろ動物園 アライグマの能力実験 http://www.mytokachi.jp/obihirozoo_2/entry/183
とても器用に容器の中の餌を取り出します。この動画はアライグマの罠を考えるために行われたものです。
2011年 十勝全体のまとめ http://www.tokachi.co.jp/news/201101/20110131-0007909.php
帯広の1件は郊外です。
2011年 アライグマからサルモネラ菌 http://www.tokachi.co.jp/news/201104/20110421-0008887.php
その論文 http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06502/b2.pdf
産廃棄物から発生した病原体が巡り巡ってまた人間に戻ってくる可能性は、鳥インフルエンザはじめ、多くの感染症で注目されています。
2011年7月 清水 http://www.tokachimail.com/shimizu/backnumber2011.php?d=20110720

など。

4.ほかの地域での取り組み例や情報、研究 ざっと集めてみただけですが

野幌森林公園地域におけるアライグマの行動圏(池 田 透・遠 藤 将 史・村 野 紀 雄)2001
http://clover.rakuno.ac.jp/dspace/bitstream/10659/1001/1/S-25-2-311.pdf

ウィキペディアの内容
http://ja.wikipedia.org/wiki/アライグマ

香川県のパンフレット
http://www.pref.kagawa.lg.jp/kankyo/shizen/gairaisyu/pdf/araiguma.pdf

神奈川での取り組み
http://www.nacsj.or.jp/pn/houkoku/h14/h14-no19.html

神奈川県周辺のアライグマの分布拡大予測
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/araiguma/

生物侵入リスクの評価と管理
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/lecture/BiologicalInvasion.htm

芽室町ではまだ見られ始めたばかり
http://www.memuro.net/sangyou/01.pdf

群馬県での調査 水棲の生物への影響が大きいとされる
http://www.gmnh.pref.gunma.jp/research/no_16/bulletin16_11.pdf

環境省の計画的防除の手引き
http://www.env.go.jp/nature/intro/4control/files/manual_racoon.pdf

都市緑地での調査(著者の佐藤さんは浦幌町でヒグマの調査をされている方です)
やはり湿ったところが好きなようだ。
http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~ken-jimuka/H19/H19gakuzyutsukouen/P01.satoho.pdf

5.環境省によって、外来生物の防除の確認・認定がなされた団体、自治体などのリスト
http://www.env.go.jp/nature/intro/4control/kakunin.html
帯広市自治体としては(これは2013年当時の記述)名前がないことがわかります→現在はあります。ただし、市民も正しく情報を理解し、本質的な対策・計画の策定を訴える必要があると思います。名簿には、自治体以外の名前もずいぶんとありますね。一緒に考えていただける研究者の方々も必要と思います!

※重要なのはキツネでもタヌキでもこの機会に今まで以上に捕られてしまう可能性があること。そうなると、逆にアライグマを利する可能性がある。わかっているだろうか?アライグマはキツネやタヌキよりずっと厄介な相手だ。