エゾリスの会 非公式ブログ!

北海道帯広の環境系まちづくり団体「エゾリスの会」会員による非公式ブログ https://noken.hatenablog.com へ引っ越し

         https://noken.hatenablog.com  へ引っ越ししました。

  草刈りと航空法伐木

移植されたカシワの実生


 前半はカシワの補植を行った場所の草取り。
後半は航空法の高さ制限に引っかかる伐木予定の場所を見に行きました。
この二つは一見別々な用件のように見えますが、終わってみるとつながりのあることだったなぁと感じています。


草取り
帯広の森は市民が木を植えたところですが、活着の成績はいい方じゃないかと思います。あまり枯れた場所はありませんが、エゾリスの会の里山をつくろうプロジェクトで保育作業を行わせてもらっている場所には少しあります。

また、昨年、無許可の「善意の枝打ち」で、林のすそがすっかりがらんどうになってしまい、林の向こうを走る車がよく見えてしまったり、枝を伐り上げた分だけオオアワダチソウなどの帰化植物が繁茂したりしています。

こうなると林がとても小さく見えるし、林の中を風が通りやすくなり、長期的には林内の木の芽や草の成長への悪影響、帰化植物の侵入など、さまざまな影響があるといわれています。

ちょうどいつもの集合場所にホザキシモツケが咲いていました。きっと植樹についてきたのでしょう。ヤマハギが生育している場所もあり、こんな植物が林縁を彩ると高さも見た目もちょうどいいのですが。

ホザキシモツケは、春にまわりのアワダチソウをとってやりましたが、心なしか株が横に広がっているようにも見えました。がんばれー。

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ちょっと話がずれますが、ブログ管理人の家にはオオバナノエンレイソウが咲きます。山の土についてきたんですね。ところが、風で強く揺さぶられ、ほかの植物とこすれた部分から茶色くなり、いつの間にか枯れてしまいます。花は咲きますが、人工授粉しても完全に結実するまでに至りません。

ほかにもいろいろな植物がありますが、よかれと思ってまわりの草を取りすぎると、揺さぶられて折れてしまったり、枯れたり、花がとれたり・・・
しかし全然手入れをしないと帰化植物に負けてしまいます。

「森には体温がある」ということと「いちど人間が手にかけた自然はずっと責任を持って手入れしなければいけない、森の声を聴きながら」と、いうことがよくわかります。

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木が枯れたところには、同じ森の中にあったカシワの実生(みしょう・種から出た芽のこと)を充てました。こうすれば、苗木のお金がかかりませんから。
しかしそこには、オオアワダチソウ軍団が待ち受けています。
北海道のオオアワダチソウはせいぜい高さ1.5mにしかなりませんが(関東のものは2mを超す)、植えた実生は高さ30cmもありません。これでは勝負になりません。最初の年はほとんど全滅に近い打撃を受けました。


作業の順番としては、実生には移植時に赤テープをつけ、これを目印にまわりを手刈りしたあと、モーターカッターが入ります。ホントは表土移植地のように抜くのがいいのですが、面積が大きすぎることと、
表土の攪乱から新たな外来種の侵入を招きかねないという危惧からこのような方法にしています。
 
実際、年1回の刈り取りならば、実生は枯れません。ホントは2回にしたいのですが・・・。
刈り取り前とあとの画像を比べてみて下さい。すっきり!
でも来月も別な場所の草刈りなのよー。

ちょうどハシドイのシーズン(街の中より10日間遅れ)、キリギリスの幼虫も見つけました。アリスイ、アカハラアオジ、ハリオアマツバメキビタキセンダイムシクイカワラヒワ。それからメジロがいました。熟し切ったサクラの実を持って行きました。


航空法伐木

検討委員会の公式の提言です(PDF)。
http://www.city.obihiro.hokkaido.jp/hp/data/page000007700/hpg000007633.htm

帯広の森」は陸上自衛隊十勝飛行場の西部に隣接し、滑走路が森を向いています。法律では航空機の進入面との関係で、高さ制限が決まっているので、これに対応して、

高さ制限が低く草原にするところ、
比較的高く里山にする(ある高さに達したら伐木)ところ、
もっと高い広葉樹林

に分けて管理タイプが整理されました。高さ制限にかかっていないところはもちろんこれまで通りです。
しかし「概念上」の決定であって、技術的にはいろいろな課題があるというお話です。

エゾリスの会の活動地は、里山林部分がかかっています。
地面の高さのでこぼこを加味して伐木が決まっています。
木も種類によって成長がちがうこともあり、いちどにぜんぶ伐ってしまうことはなく、「間伐風」になるのですが、実際に現地に立つと、いろいろと考えなければいけないことが出てきます。


1 木が倒れるかも&見た目がスカスカ?
今年度伐るシラカバ主体の林分の場合、残る木がとても少ないので、残した場合風などで折れてしまったり、かなり上にしか枝がないのでトップヘビーになって曲がってしまったりする可能性がある。
また、草刈りのところで書いたように森のボリューム感が著しくそがれます。「帯広の森」は平地の細長い帯状林なので、切り方によってはスカスカに見えてしまうのです。いまの運動施設区がもっと森的だったならそれほど気にならないんでしょうが・・・。
それでこのスカスカ感をどのように解消するのかという問題があります。


2 林床植生の管理が大変だろう。
これも草刈りのところで述べましたね。林の「ギャップ」が生じるので帰化植物が元気になる場合も多いでしょう。
3番にも関係してきますが、現状の林床にある木の実生を生かして次世代の林分をつくる場合、モーターカッターでいっせいにというわけにはいかないのです。多数の人間で手刈りをしなければいけません。
そして「どう刈るか?」は「どんな林分にするのか」に直結しており、それは林分ごとに異なるのです。管理作業をする人間はそれを理解しなければいけないのです。これは大変ですよ。

来年度からは「林の保育とは草を刈ることと見つけたり」という状態になるかもしれません。


3 目標としての林の姿がむずかしい
高さ制限15mと8mでは同じ里山林でもやらなければいけないことが、かなり変わってきます。高さが低いと林冠が形成(木が大きくなって空を覆うこと)できないかもしれませんし、そうなると光が強くて林床管理が大変です。木の密度を上げるとちょっと入りづらい林になってしまうかも・・・。

いやーこれ、難しいです。


4 モニタリングの問題
現状の林床がどうか?伐木後はどう変わったか、記録をとりたいのですが・・・既存の学術的なやり方で自分がやることを考えると無理です。
効率的に行える方法が欲しいです。あと人も。


5 草原の方はどうすんの?
タイトル通りですね・・・元農地を大きな森にするなんてことも初めてだったのですから、さらにそれを伐って、回復しつつある植生を生かしながら草原化していく・・・こんなことは世界初だったりして・・・
だから現地に即した方法論はないのです。学術的、技術的、経験的な事例から学んで、その場所と相談しながらためし続けるしかない。
自分の危惧は、「そんなことがやれるのか?」ということです。

最低限必要なこととして、皆伐した後は、オオアワダチソウとギシギシとオオハンゴンソウとクサヨシだけに絞って抜き取り刈り取りを徹底すること。
勘違いして勝手に種を蒔いたり、植えたり、花壇や畑をつくったりしないように、
「人間の管理」をきちっとすることが肝心だと思います。



里山林もそうですが、帯広というまちにとっても大きなチャンスなんですけどね、この、都市林での自然復元の世界最先端的な事例をもっと紹介して、いろいろな人にきてもらって調査、研究、実践・・・つかってもらえば知恵もつくしステイタスも、市民の参加性も上がるんですが。思い切りプッシュすれば世界的に通じる事例だと思います。


来年は北海道で環境をテーマにしたサミットがあることですし。
ばんえい競馬やスケート場だけじゃなくて、
一見地味な「都市森づくり」が世界に通じる話題になりうると思います。