エゾリスの会 非公式ブログ!

北海道帯広の環境系まちづくり団体「エゾリスの会」会員による非公式ブログ https://noken.hatenablog.com へ引っ越し

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北海道新聞釧路支社の非科学的な記事

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/151325.html
環境・自然・科学 タンチョウ、鳥インフル感染の危機 阿寒 餌場にオオハクチョウ

タンチョウの給餌場にオオハクチョウが集まっていることに対して、感染症リスク増大の危惧を抱いている記事ではあります。危惧そのものはわかります。しかし、その記事内容は雰囲気的にすぎ、こんな報道ならしない方がましだと思いましたので問題点を指摘しておきます。また、餌付けや人獣共通感染症について多くの方が陥りやすい
要素を含んでおりますので、重要な出来事であったと思われます。

>鳥インフルエンザ対策でハクチョウの餌やり場が減少したためとみられる。
のであれば、その分布と数を示し、その場所のハクチョウ増加と比較して書くべきところを、記事では雰囲気しか表現していない。情報源も不明瞭です。
そもそも近い場所での餌付けが完全に中止される以前から、ハクチョウはこの場所を知っていたようです。ハクチョウへの餌付け中止が、タンチョウの餌付け地への移動を加速させた面はあると思います。
が、仮にハクチョウへの餌付けを自粛しなくても、この現象は起きたでしょう。地域全体の餌量は多く維持されるわけですから、タンチョウもハクチョウも含め「餌付けに依存する野生鳥類」の個体数も多く維持されてしまいます。そこがこの問題の本質だと思います。

たとえ最初は数羽であっても、世代を重ねれば、ほかで自粛しようがしまいが、餌付けを同じように続けていれば家族の分だけ増えると思います。それにこの冬「近隣での餌付け」が本当にまったくされていないのでしょうか?この数がいるということは、普通にやっていたんじゃないかと疑いたくなります。

>同センターによると、オオハクチョウが現れたのは鳥インフルエンザが国内で七十九年ぶりに見つかった二〇〇四年から。

「餌付け自粛ブーム」は昨年からであり、この時期に該当するような自粛はなかったと思います。

もう一つの問題は、鳥インフルエンザは、ハクチョウからうつるもんだと思っている記事になっているということです。
→ハクチョウには何から感染したと考えているのでしょう。カモ、小鳥、家禽、そして人間や飼料ですら可能性があります。ハクチョウは加害者ではありません、被害者です。人間が高病原性鳥インフルエンザを家禽内に封じ込めに失敗して、自然環境中に流出させた結果、野生鳥類が死ぬのです。感染症鳥インフルエンザだけではないということも理解されていないようです。

> 日本野鳥の会釧路支部の林田恒夫支部長は「ハクチョウが給餌場に集まるシーズン初めに集中的に追い払い、定着させない工夫が必要」と指摘している。

→追い払えばいいような代物ではないでしょう。そもそも餌付けにどんなリスクがあるのか体系的に考えれば答えに近づくと思います。コメントの内容も貧弱ですが、ほんとにこのとおりの発言(考え)だったとはいえないと思います。もしそうだったら頭抱えちゃいますが。

十勝管内音更町十勝川温泉白鳥飛来地では二年前から、観光協会による餌付けをやめ、観光客が与えるだけにした。

これは事実と違います。
http://www.tokachi.co.jp/WEBNEWS/061110.html
2004年暮れからであり、餌付け量を観光協会がコントロールしています。

こういっては申し訳ないけど、この記事は危機への思い込みでストーリーが出来上がっています。野生動物や感染症、そのつきあい方などに対してかく乱するような要素が多い記事だと思います。これで環境、自然、科学カテゴリで発信しているとは社会的に悪影響があると思います。一般の方が感じるような認識不足に基づいた危機感は、同じようなレベルの報道によって増幅される危険があります。
件の餌付け場で餌付けをはじめた人は、この危惧に対してどう責任をとるのでしょう?・・・・もちろん、とれません。でも、それは個人だけの責任ではないと思います。行政など、しかるべき立場が動いていないことも見逃せないと思います。

そもそも、ハクチョウへのいいかげんな餌付けをしていた(社会が黙認していた)ことが問題だし、タンチョウへの給餌手法や広域的、長期的な計画の問題ととらえるべきで、その意味ではいいチャンスなのです。自然環境により適応していける社会を建設的に考えるためには、報道がこんなレベルでは、困るのです。記者の方などとのコンタクトはとれているのですが、記事そのものはネット上でまだ見ることが出来ます。そのためこのいささか語気が強い日記ですが、多少手は入れるもののそのままアップしておきたいと思います。

追記:その後の調べで、確かに釧路動物園あたりの餌付け場の中止にともなって移動してきた個体があることは確かだとわかりました。ハクチョウに餌付けをしていたから留まらなくてもいいハクチョウが地域に留まってしまい、このような心配を招いたのだとおもいます。餌付けははじめるのは簡単、しかし、終わらせるのはとても難しい。はじめるのに理由がいらなくて、終わらせるのに理由がいるのなんて変だと思いませんか??野生動物の行動に大きな影響のあるこの行為が、どこの許可もいらずに勝手に行うことが出来る(と思っている人が多い)のは、いかがなものでしょうか。

追記2:その後のコンタクトで、餌付け問題の本質、功罪、今後の考え方についてよく問題を整理しながら報道が出来る方向に進みそうです。そうなればこの問題をもっと一般的にも専門的にも取り組める下地が出来ると思います。期待したいと思います。