エゾリスの会 非公式ブログ!

北海道帯広の環境系まちづくり団体「エゾリスの会」会員による非公式ブログ https://noken.hatenablog.com へ引っ越し

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おすすめしません野生動物への餌付け

エゾリスの会では、事故の可能性の排除、絶滅危惧種保全、学術調査などの特別な事情がない限り、公園や河川敷のような公共的な場所や、交通事故の直接的な危険を増やすような場所、森林などの自然環境の中での野生動物への餌付けはしない、すすめない方針です。

この記事を書いた当時よりも、今は個人ブログなどで餌付けシーンがどんどん公開されるようになりました。
http://d.hatena.ne.jp/noken/20070802
このため、新しい情勢などを踏まえ餌付け問題について再び書きました。

例えば、財団法人日本野鳥の会が公式に見解を出しています。
http://www.wbsj.org/nature/infection/influenza/081224.html


以下ブログ管理人の見解です。
(2007年に書いたのではしょった部分があります)

最近つぶやいたものです。
http://twilog.org/noppara_ezorisu/date-110211

公共的な場所での野生動物への餌付けはしないでください。その場所のルール(餌の量、種類、時期など)が公的に設定されている場合はそれに従ってください。
個人の庭であっても、野生動物や生態系に「迷惑」をかけないでください。
どうすれば良いのかわからない場合は、野生動物の公的専門機関におたずねください。

餌付けとは何か?

1必要がない
 もともと野生動物は自立しており、餌付けをする必要性がありません。
 餌付けは、人間にとっては何か意味をもつ場合があると思います。
 しかし、野生動物にとって「同じ意味」があるとは限りませんよ!

2今多い種を増やす必要があるのか?
 餌付けは「いま多い種」「人間に慣れやすい種」をさらに優遇しようとしている(結果として優遇できるかどうかは別)だけに見えます。

3交通事故が増える
 ハクチョウ受難 交通事故多発 市街地餌付けで?
 http://www.tokachi.co.jp/news/200901/20090115-0000406.php

 エゾリスの場合も「人間が餌で増やしては車でひいている」状態になっています。餌をやっている人はそれに気がついているのでしょうか?無責任だと思います。

4環境教育上の問題
 「野生動物にはエサをやるものだ」という間違った情報を流布します。
 特に子供たちにそのように思い込ませるのは良くないと思います。

5植生が変わる
 例えば、緑ヶ丘公園では餌付けが多すぎるので、リスがうめたクルミをあまり掘り出さないようです。このため、クルミの木が非常に多くなりつつあり、植生が大きく変化する可能性があります。

6自然環境への評価を不正確にする
 餌付けをした環境で自然を正しく評価できるでしょうか?
 餌付けとは野生動物の数や場所をが人工的に「餌付け人に都合のいいように」操作することが目的になっています。ですから、そのような環境で正しく自然を評価できないと言われても仕方ありません。

7自然の再生につながらない 
 餌台にリスが来ることで人間が満足し、川にマガモやハクチョウが集まることで満足する。公園などの自然の質の向上にはつながりにくいのではないでしょうか。身近な自然や生物多様性保全は、口当たりの良い話だけではすまない問題です。餌付けはその都合のいい部分だけを人間が享受しすぎています。

感染症や中毒の問題 最もおそろしい問題です。
 この問題は2000年前後からさかんにいわれるようになってきています。
 http://www3.ocn.ne.jp/~micchi/osatu/ben/marek1.htm
 動物の密度が不自然に高まることで「動物どうし」の感染症リスクが高まります。
 鳥類には十数種類の感染症があり、高病原性鳥インフルエンザはその一つにすぎません。
 2009年人間はあれほど新型インフルエンザに悩まされ、たとえば学校行事が一つの感染源になると学習しました。野生動物は「うがい、手洗い」出来ないのです!このことをもっと思いやって欲しい。

 スズメの大量死問題で、サルモネラ菌類が発見されたことは記憶に新しいですね。

ネズミチフス菌でスズメが大量死. 3-23-2007
http://www.microbes.jp/aimai/kurashi/fl460.htm

今年見つかったスズメ4羽の死亡原因はサルモネラ感染症
http://www.janjannews.jp/archives/2880002.html
 
これらは人間が仲介となって自然界に感染症を広げた例といえます。

高病原性鳥インフルエンザの例を一つ示しておきます。
以下は2005年の発生時における記事の一つです。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/hotnews/archives/380613.html
ところが、インドガンが家禽化され、これが放逐されていることがわかりました。
http://www.tibetinfor.com.cn/news/2003-12-28/N0320031228112940.htm
青海湖は人の少ない奥地ではなく、大きな観光地なのだそうで、件の大量死の背景に人間活動が存在する可能性が高いと考えます。

9動物がなれすぎる
 人間は「野生動物があまり逃げない」というレベルで満足すべきでしょう。
 それ以上接近させること(手渡し餌)など、人間の欲を満足させるための行動でしかない。野生動物には無意味。

10餌付けを見て不愉快になる人もいます。
 餌付けは誰のため?何のため?ただ自分の所有欲を満たすためだけのものを公共的な場所におかれるのはいい気持ちではありません。
 某所では、写真を撮る人がにナキウサギにリンゴやヒマワリをあげているとか・・・。原生花園でキツネの写真を撮るために積み上げたドッグフードの山をみると、ホントにがっかりします。
 エサと生ゴミは何がちがうのか?自然から見ればたいして変わらない。

11責任が発生しますよ!
 餌付けをすればそこに「責任」が発生します。自然はわからないことの方が多いので、何も完璧である必要はありませんが、「責任の発生」「どのような責任があるか」について自覚する必要はあると思います。

 ペット飼うときも覚悟がいるのですから、野生動物も当然です。なぜ野生動物へだけ、エサやりっ放しであとは責任はないと思いこまれているのでしょう?愛玩動物で満足しましょう。野生動物は遊びで餌をやって喜ぶ対象にすべきではないと思います。
餌付けとは野生動物の人工化です。

12鳥がたくさん来る→自然の生息地から奪っているだけ?
たくさん集まって来るということは、ほかから奪っているということに気がつきましょう。奪われた場所から見れば、(時間的にであっても)生態系から欠けたわけですから、半分殺されたようなものです。餌付けする人は、そういうことに気がついていないと思います。

13問題を増やしている
 自然環境の保全の上で、一番問題があるのはもちろん生息地の破壊です。餌付け問題はそれらに比べれば小さいと考える方も多いでしょう。しかし、この「小さい問題」があるために、自然の評価が妨げられ、数少ない研究者が時間を奪われ、自然への理解が妨げられ、また、その説明に必要な分だけ時間が伸びているのです。私もこれを書くために、下調べから勉強から含め、数日使っているのです。
餌付けとは「欲」の発露です。このような環境保全上の障害となるような「欲」はコントロールされるべきだと思います。

最近。例えば日本鳥学会のようなところでも餌付け問題がとりあげられるようになりましたが、大きな問題であると広く認知されるまではまだ時間がかかりそうです。

*「庭の餌台」のようなものについては別にマナーを設定すべきかと思いますが、交通事故の危険がある場所では控えてほしいものです。エゾリス向けの場合は交通事故に遭わせるような餌台を見かけます。
また一年中設置し、なおかつ大量に餌供給するものは動物、鳥に対する衛生上も、生態系への影響上も好ましくないという見解です。量や時期を調節したいんだけど、どうしても精神的に出来ない。という方は上記を踏まえた上、「餌台は鳥や動物のためではなく、人間が自分のためにやっている」という自覚を忘れないようにしていただきたいと思います。