エゾリス調査の10年 その1
「毎年やって、はじめてわかる」
このグラフをごらん下さい。
エゾリスセンサスの初回から今まで(1997〜2007)のまとめです。
チョウセンゴヨウ結実数の調査も書き込んでいます(結実の↓実の字が消えてました)
調査は他にも行っているのですが、今回お話は「帯広の森」でのエゾリスの生息数です。
帯広の森の環境を網羅できるよう、7本のコースをひいて一斉に調査していますが、このグラフは全てのコース上の エゾリス観察数を、観察距離で割ったものです(頭/100m)。
「生息状況が表現できるぎりぎりの省略」をしたもの、と考えてください。
各年の春・秋ごとの数字で、一年に二つの点があります。
そして、ほぼ水平、非常に緩い上昇をしているのが、自動的に検出した平均的なリスの密度、(頭/100m)です。
リスの個体数は、この平均的な値を中心に、数年おきに波を打っているのがわかりますか?
当初、エゾリスの会では、「帯広の森」ではリスはどんどん増えていくものと思っていました。しかしよく考えれば、2から3年おきの増減する姿、これこそが自然なのかもしれないと思うようになりました。
もちろんこの数字は密度ですから、植樹した木が育って森の外観を整えていけば、全体としてのリスは増えていくとの考えたかもあるでしょう。
それは否定しませんが、エゾリスの行動圏を考えると、森を狭くぎゅうぎゅうと使っていたものが、ゆったり広く使う、という風に変化した、と考えることもできます。
このグラフにもし、一年おきに空白をつくったらどうなるでしょう?
波が小さくなるだけではなく、たとえば「前年のチョウセンゴヨウの結実の多少が翌年の個体数に変化を与えるか?」といったことは全く考察できなくなってしまいます。
「帯広の森」を健全に育てていくということはどういうことか、自然と真摯につきあうということはどういうことか、私たちがこの調査から学んだことは大きいと思います。
そして、この調査は専門の人数人だけでは出来ませんでした。「エゾリスの会」会員だけでもありません。口コミで声をかけ、参加したいという一般の方もいなければ、十分な人数にならないこともあります。
このように、いろいろな人たちが関わっていることも見逃してはならないことだと思います。
帯広百年記念館でこの結果を発表する機会がありましたが、一番強調したのは「毎年地道に」「市民がみんなで歩き続けた」という部分でした。
(つづく)